
在宅フリーランスの翻訳者って、基本的に取引先の方と顔を合わせる機会はほとんどありませんよね。
取引先である翻訳会社さんとの連絡手段は、基本メールのみ。毎日のようにやりとりするわりに、コーディネーターさんの顔も知らなければ、どんなオフィスで働いているのかもわからない。
それでも仕事は回っていくし、「それが普通」として何年も過ごしている翻訳者の方が多いんじゃないかと思います。
私もそうでした。独立してからずっと、やりとりはメールだけでした。
でもある日、「直接挨拶に行ってみよう」と思い立って行動してみたら、メールのやりとりだけでは見えなかった景色がそこにありました。
今回は、その体験談をまとめます。
なぜ挨拶に行こうと思ったのか
最初のきっかけは、プライベートで東京に行く用事ができたことでした。取引先の企業は東京が多いですが、地方在住なのでそう気軽に行ける距離でもありません。
でも、たまに東京に行く機会があって、そのとき、旦那さんが一言「せっかく東京行くなら、挨拶してきたら?」と。
なるほど確かに。いい機会かも(笑)
挨拶に行こうと思ったのは、お取引が始まって約1年が経った翻訳会社さん。未経験のときに採用していただき、それからずっと安定して仕事を回してもらっていた取引先です。
目的は、まずは感謝の気持ちを直接伝えるのが一番。それから、日頃依頼をくださるコーディネーターさんに直接会ってみたいという気持ちと、あわよくばこれを機に仕事が増えたらいいなと(笑)。
正直なところ、人前に出るのが得意ではないので怖さもありました。相手さんも忙しいのに迷惑じゃない?そもそも何を話したら…?
それでも、翻訳者が挨拶周りに行く話はあまり聞いたことがなかったので、良いアピールにもなるし、直接会うことで「こんな人なんだな」と知ってもらって、信頼関係がより深まるかもしれないと自分に言い聞かせました。
挨拶のアポをとったときの実際のメール
アポをとる段階でも少し悩みました。誰宛てにいつどんな内容で送るべき⁉
でも思い切って送ってみたメールがこちらです。
(一部抜粋)
この度は、直前のご連絡となり大変恐縮ですが、久しぶりに東京に行く予定があり(現在は○○在住)、もしよろしければ御社まで直接ご挨拶に伺いたく、ご連絡させていただきました。
御社とお取引させていただけるようになり1年少々経ちましたが、ほとんど翻訳実績のなかったところからご依頼いただき、いつも本当に丁寧にご対応いただき心より感謝しております。
なかなか対面でご挨拶させていただける機会がありませんでしたので、もし可能であればこの機会に直接ご挨拶させていただきたく思っております(お忙しいかと思いますので、ご挨拶のお時間だけで結構です)。
こちらの都合で日時を指定することとなってしまい大変恐縮でございますが、【〇月〇日(△)の17時前頃〜18時の間】などはご都合いかがでしょうか?
※訪問の約1週間前、マネージャーさん宛て(ccにコーディネーターさん方)に送信。
気をつけた点としては、「お時間はほんの少しで大丈夫です」と先に伝えたこと。先方の負担を最小限にしつつ、こちらの意図(感謝を伝えたい)を素直に書きました。
早くに連絡しすぎて、スケジュールを押さえることになってしまうのも迷惑かなと思い、都合が合えばでOKというスタンスで割と直前で連絡を入れました。
それから、このメールにはもう一つ用件も入れていました。
ちょうどCATツール「Trados」を導入したタイミングだったので、それも合わせてお伝えして、Tradosで受注できる案件があればぜひという意思表示もしました。
普段は案件ごとに担当コーディネーターさんとの個別のやりとりですが、挨拶に添える形で全員に自然に伝えられたので、いい機会になりました。
実際どうだった?予想以上の歓迎ぶりに感動
ドキドキしながら当日、オフィスに伺ってみると……予想をはるかに超える歓迎ぶりでした。
ほんの少しのご挨拶のつもりでしたが、事務所でお話をした後、近くのお店で食事までごちそうに!
「翻訳者さんが挨拶に来てくださることはほとんどないので、直接会えるのはすごくうれしい」と言っていただいたとき、「来てよかった!」と心から思いました。
事務所の中も案内していただいて、普段メールでやりとりしているコーディネーターさんにも何名か実際に挨拶することができました。なんだか急に距離が縮まった感じがしました。
行ってよかったこと① 顔が浮かぶと、仕事の向き合い方が変わる
帰ってきてから一番変わったのは、メールを送るときの気持ちです。以前は「○○さん」という、どこか抽象的な相手へのメールでした。
でも今は、顔が浮かびます。あの人にメールしてる、という感覚。より丁寧に、互いに気持ちよくお仕事ができるようにと、前以上に意識するようになりました。
「困ってそうだな」と感じたら、ちょっと一肌脱ごうか、と(笑)仕事って結局、人と人のつながりなんだなと改めて感じた出来事でした。
行ってよかったこと②「気になるけどメールで確認するほどでは」を聞けた
対面だからこそ聞けたことがありました。
実はちょっと気になっていたことがあって。あるコーディネーターさんからの依頼が、あるときからパッタリとこなくなっていたんです。自分の仕事の質に何か問題があったのか?何かやらかしたのか?嫌われた?
でも、メールで「なぜお仕事をいただけないのでしょうか?」なんて聞けるわけもなく…。
それを直接お会いしたときに、思い切って聞いてみました。悪いことがあったなら受け止めて次に活かそうと。
答えは、「社内の方針で、ひっきーさんにはA社をメインで担当にしてもらおうとなった」とのこと。
何もやらかしていなかった!(笑)
ただの社内の方針変更でした。言いづらいからそう言ってるのかな、と思いもしましたが、皆さんの顔や話しぶりから本当にそうなのだろう、と思えました。
これを聞けただけでも、挨拶に行った価値があったと思っています。
在宅フリーランスって、仕事が来なくなった理由がわからなくてモヤモヤすることって、結構ありますよね。直接聞ける機会は、本当に貴重だと思いました。
行ってよかったこと③ 翻訳者としてのリアルな評価が聞けた
翻訳者としての率直な評価も聞けました。
おそらくどの翻訳会社さんも、登録翻訳者ごとに評価を付けていると思います。
依頼主であるクライアントからのフィードバックや、QA担当者からの評価、普段のやりとりなど、さまざまな指標で「この翻訳者はここが強い弱い」など分析して、案件に適した翻訳者を選定するためです。
翻訳品質を数値化したスコアなど、翻訳者自身が確認できるものもありますが、全体的な評価を聞けることはなかなかありませんよね。
文面にはしづらくても対面ならということで、全体的な評価や、今のところ特にクレームにいたった問題がないことなどを教えてもらいました。
ホッ (´,,-ㅿ-,,`)ホッ(笑)
「ひっきーさんは○○のような分野のQAが上手ですよね」と言ってもらったときは、翻訳はまだしもQAは多少苦手意識があったので、とても意外でした。
行ってよかったこと④「やりたいこと」を伝えたら、仕事が変わった
もうひとつ、大きな変化がありました。
お話の中で、「今後やってみたい分野、興味のある分野」を聞いていただきました。それで、前職で日本語の商業ライティングをしていたことを伝えて、マーケティング系の翻訳をやってみたいと思っていることをお伝えしました。
するとその後、割とすぐにマーケティング関連の案件を回してもらえました。今では、マーケティング系の案件が当たり前のよう来るようになり、IT+マーケティングが専門というスタイルが確立されてきています。
あのとき思い切って話せたからこそ、今の自分があると思っています。メールでは実績も少ないうちから「○○もやりたいです!」とはなかなか言い出しにくいですよね。
対面だからこそ、自然に伝えられました。
行ってよかったこと⑤ 仕事の「幅」が広がった
挨拶に行く前は、決まったコーディネーターさんから仕事をもらうことが多かったです。新人ということもあって、まずは限られた範囲で仕事を回す感じだったのかな、と今は思っています。
挨拶の後からは、今まであまりやりとりのなかったコーディネーターさんからも仕事の依頼がくるようになりました。
仕事量に関するお話の中で「基本的には十分だが、少し少ない月もある」と伝えたので、見直していただけたのだと思います。
以来、翻訳内容のバリエーションも増えて、仕事の幅が確実に広がったと感じています。
2社目の挨拶でも、予想以上の出来事が!
翌年、もう1社にも挨拶に行きました。
こちらも同じく、「翻訳者さんが来てくださることはほとんどないので」と歓迎していただいて。なんと、普段は在宅で勤務されているベテランスタッフの方々が2名、わざわざその日のために出社してくださっていたんです。
それだけですでに感動だったんですが、さらにもうひとつ。
手土産を持って行ったのですが、まさかの先方からもお菓子をいただきました。わざわざ準備してくださっていた、その心遣いが本当に嬉しかったです。
2〜3時間、いろんな話をして帰ってきました。こちらも今もお取引が続いています。
まとめ:全員がやる必要はないけれど、機会があればぜひ
「翻訳者が取引先に挨拶に行く」って、決してスタンダードな行動じゃないと思います。在宅・メールのみで何年もやっている翻訳者の方もたくさんいるし、それで関係が悪いわけでもない。
ただ、私個人の体験としては、行ってみてよかったことしかありませんでした。
- 顔が浮かぶようになって、仕事の向き合い方が変わった
- メールでは聞けないことを聞けた
- やりたい分野を伝えられて、仕事の中身が変わった
- 仕事の幅が広がった
- お互いの「人となり」を知ることができた
在宅フリーランスって、どうしても孤独になりがちだし、取引先との関係がメールの文字だけになりがちです。
でも、相手もやっぱり人間で、顔を見て話すことで初めてわかることもたくさんある。
もし、取引先の近くに行く用事があるなら、「ついでに挨拶に行ってみようかな」くらいの気持ちで、試してみる価値はあると思います。意外と歓迎してもらえるかもしれません。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
「行ってみようかな」と思った方も、「いやいやメールだけで十分」という方も、何かひとつでも参考になることがあれば嬉しいです!

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